2026.11.06NEW
「直進されていたお客様にも、2割ほど過失がつきます」
信号のない交差点を直進していて、対向車線から右折してきた車のボンネットに自分の車の右側面をぶつけられたDさん。相手方の保険会社から、電話でそう告げられました。
ぶつけられたのは自分の車で、何もしていないのに止まっていただけ――いや、直進していただけ。修理費の見積もりは32万円。Dさんはこう思いました。
「え、右折してきた方が悪いんですよね? なんでこっちにも過失があるんですか」
Dさんのように、直進していた側が「自分は何も悪いことをしていない」と感じるのは、むしろ自然なことです。
実際、こうした「右直事故」――右折車と直進車が交差点でぶつかる事故――では、多くの場合、右折した側のほうが重い過失を負います。見通しの悪さにかかわらず、対向から直進してくる車を妨げてはならない、というのが道路交通法の基本的な考え方だからです。
ですが、「右折車の方が重い」ことと、「直進車に過失がゼロ」であることは、イコールではありません。
信号機のない交差点での右直事故は、裁判所の過去の判断の蓄積から、基本の目安としては直進車2割・右折車8割程度とされることが多いのです。
「直進していただけなのに2割」――これは、提示してきた保険会社の都合のいい言い分なのでしょうか。それとも、もともとそういう決まりなのでしょうか。
そもそも過失割合とは、事故の原因について、双方の不注意の程度を割合で表したものです。
裁判になったときに参考にされる割合の目安は、長年の裁判例を整理した資料にまとめられています。保険会社の担当者も、示談交渉の場面では、基本的にこの資料をベースにして割合を提示してきます。
ここで誤解しやすいのは、「保険会社が勝手に決めた数字」ではなく「裁判でもよく使われる目安」だという点です。目安であること自体は、間違っているわけではありません。
問題は、この目安があくまで「基本形」であり、実際の事故ごとの事情を反映した数字ではない、という点にあります。
基本の過失割合は、交差点の状況や双方の運転の仕方によって、プラスにもマイナスにも修正されます。
たとえば、次のような事情があると、右折車の過失がさらに重くなる方向に修正されます。
逆に、直進車の側に次のような事情があると、直進車の過失が重くなる方向に修正されます。
Dさんの場合、相手の右折車が合図を出していなかったのか、交差点に入った順番はどうだったのか――そうした事情を一つ確認するだけで、提示された「2割」が動く可能性は十分にあります。
最初の電話で告げられた割合を、そのまま最終的な数字だと思っていませんか。
修正要素の多くは、結局のところ「どちらの言い分が正しいか」という話になりがちです。合図を出したかどうかは、特に水掛け論になりやすい代表例です。
ここで力を持つのが、客観的な記録です。
ドライブレコーダーの映像が残っていれば、合図の有無や進入のタイミングは、ほぼ一目で分かります。逆に言えば、映像が残っていないと、「言った言わない」のまま、保険会社が出してきた基本の割合だけで押し切られてしまうことも珍しくありません。
事故直後の映像データは、きちんと保存できているでしょうか。
ケガを伴う事故であれば、治療が終わるまで示談を急ぐ必要がないことは、多くの方がご存知です。
一方で、物損事故(車の修理費だけの事故)は、金額も比較的小さく見えるため、「早く終わらせたい」という気持ちから、提示された割合をそのまま受け入れてしまいがちです。
ですが、過失割合が2割動くだけで、修理費の負担も、代車費用の負担も、結果的に数万円から十数万円単位で変わってくることがあります。金額が小さく見える事故ほど、かえって検証されないまま決着してしまう、という面があるのです。
一つでも当てはまったら、示談を急ぐ前に確認する価値があります。
Dさんのケースで押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
保険会社からの最初の提示は、あくまで交渉のスタート地点です。納得できない数字を、納得できないまま受け入れる必要はありません。
もし、「過失割合の提示に納得がいっていない」「ドラレコの映像はあるが、どう使えばいいか分からない」という状況であれば、示談書にサインをする前に、一度ご相談ください。
お気軽にお声がけくださいませ。
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